ケガ以外でも労災が認定された事例インタビュー(当会員さん)

現場で急に体調を崩し、救急車で病院に運ばれた当協会会員の佐藤さん。
医師の診断は「過労による脳梗塞」。
当協会の「一人親方特別労災」に加入していたことで労災の申請をし、認定がおりるまでの経験談を中小建労働保険事務組合担当の中嶋がインタビューしました。

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中嶋:最初に病院に運ばれて「これは労災だ」と思いましたか?

佐藤:いやー、わからなかった。

中嶋:そうですよね、意識もなかったんですもんね。どういう状況だったんですか?

佐藤(奥):私は家にいたんですけど、現場の主人から電話がかかってきて「ふらふらして調子悪いんだけど…」と言うので救急車を呼ぶように言ったんですが、出来ない状態というので救急に現場の場所を伝えて私が呼びました。いつもだったら調子悪いくらいで見逃すんだけどなんかおかしいと思って。

中嶋:奥様だから気づけたのかもしれませんね。佐藤さんはこの仕事を始めて何年ですか?

佐藤:中学から始めて…、50年かな。

中嶋:では今まで労災事故なんて経験したことなくてそんな状態になられたのなら驚きますよね。周りでは労災使われている方は多いですか?

佐藤:話は聞いたことあるけど、直接関わりのある誰がっていうのはないかな。

中嶋:労災なんて出来る事なら使わないのが一番いいですからね。
実は申請時に病状を伝えた時の監督署の第一声が「難しい」だったんです。こういった症状の場合は他の事故などよりも添付していただく書類が多いですがどうしますかと。でも今回ような時のためにあるのが「いざという時に使える保険」労災保険なのですが、佐藤さんの場合、労災認定になるポイントがありました
労働基準監督署も感心していたのですが、書類の一つとして提出した日々の業務状況を記した「ダイアリー」(写真参照)です。
いつ、どこでどんな業務を行ったかが書かれていて、あとから思い出してまとめて書けるようなものではないですね。
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この病状を引き起こす裏付けとしてこの「ダイアリー」があったのは大きかったです。これを監督署に提出したことによって、日々のお仕事をきちんと管理されているという印象もついたようです。

中嶋:面談も一回で済ませる場合や電話だけの印象で判断される場合もあるのですが、佐藤さんは奥様と何回か監督署に通い、担当者と顔を合わせて説明した結果認定をもらうことができましたね。
そして認定がおりた時に監督署から言われたのが「奥さんを悲しませないように、あまり無理しすぎないように伝えてください」という暖かい言葉でした。
また、「私たちも認定をしたくないわけじゃないのですが、書類が揃わないと通らない」ということでしたので、本当にダイアリーの存在は大きかったんですけど。
申請から認定までも結構かかっていますよね。

佐藤:平成27年6月18日に運ばれて認定の連絡を受けたのが12月だったので半年かかりましたね。監督署に行った時には認定がおりるとすれば1月だと言われていたんですよ。

中嶋:休業補償の支給はここから一か月位かかるのでまだ少しかかるのですが、これまでも何度も書類をやりとりしてわかるように、やはり途中で嫌になって申請をやめた方もいらっしゃるのですが、佐藤さんは奥様が根気よく手続きを進めたので内助の功でしょうかね。
それで現在体調はどうですか?

佐藤:おかげさまで今はそういう兆しもなく、薬は続けていますが通院はしていません。でも、今までは労災保険は現場に入るために加入していたって感じだったのですが、今回のような事を経験すると「入っていて正解」だったと実感しています。
事故とか怪我とかなら目に見えるものですから認定されやすいんでしょうけど、こういうのは労災ってわかりづらいですから。

佐藤(奥):私も支払いの時に病院から「労災ですか?普通(診療)ですか?」と聞かれて、何もわからないから「いや、普通で…」と答えたんですけど、次の病院で高額の医療費を請求された時に「仕事が忙しかった」からこうなったんだし、労災かけてるしと思って中小建の労働保険事務組合に相談したんですよ。本当に年の前半すごく仕事が集中して、気温も高く蒸し暑かったからどうなんだろうと思って。

中嶋:こんなことが大変だったとかありましたか?治療費を立て替えたとか。

佐藤(奥):一回だけ薬代を払ったけどすぐに振り込まれました。あとは病院が面倒でした。ああいう書類って取りに行かなければならないので遠かったから大変で。でも事情を話して郵送してもらう事ができたのでよかったです。
それからダイアリーをコピーするのが大変だったかな(笑)。平成26年の12月から当日までの記録を用意するようにってことだったので。でも面倒がらずに監督署にも足を運んで良かったと思ってます!説明も1回4時間以上かかった時もありましたが、経験しないとわからない事ですしね。

中嶋:先ほども話がでましたが、監督署も認定するために話を聞いたり書類をそろえるよう指導してくれているので、それを「面倒」とあきらめてしまうのはもったいないですよね。

佐藤(奥):認定されるために用意する書類が無いのに「ある」と取り繕っても後から作ることはできないので、コツコツ書き留めておいたのが良かったです。
それから自分達だけではここまでできなかったですよ。中小建の事務組合が間に入って、私たちの身になって動いてくれて。何度も監督署に足を運んでくれたしね。
監督署の担当との相性もあったかもしれないですね。中嶋さんが監督署の担当に熱心に連絡してくれたから余計に親身になってくれたんじゃないかしら。

佐藤:中小建のありがたみがよくわかったよ(笑)。

中嶋:そのために私たち(中小建事務組)がいるんですから。そう言っていただけると頑張った甲斐があります。でも本当に回復されてよかったですね!

佐藤(奥):そうですね。治療費も全部自分で払ってたら何十万ってかかってたけど労災扱いにしてもらって助かりました。ところでお薬っていつまでタダなのかしら?

中嶋:お医者さんが「完治」というまでずっとですよ。そこが民間と国との違うところで、民間なら180日とかで完治していなくても切られてしまいますけど国の保険なので最後まで面倒見てくれます。
民間ならこんな面倒な書類を出さなくてもすぐ保険がおりるとか皆さんおっしゃいますけど、仕事でこういう大きな病気になった時こそ完治するまで安心できるのがこの保険なんです。
それに民間の保険も国の労災保険に加入していないと使えない場合もありますから、こちらの保険ありきって所が大事なんです。

佐藤:そうなんですね。やはり加入しておいてよかったです。

中嶋:貴重なお時間をありがとうございました。これからも夫婦仲良く元気に頑張ってください!

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このように労災保険はケガだけでなく、仕事をしていたことが原因で発症した病気にも対応しています。
その場合は原因を証明するための資料や書類をケガの時よりも多く提出しなければなりませんが、佐藤さんのようにお仕事の記録をしっかり付けていれば、慌てることなく労働監督署からの資料請求に対応する事ができます。
みなさんも万が一の時のために手帳などに記録を取っておくことをお勧めいたします。

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